占星術における「アスペクト」とは何か
アスペクトとは複数の感受点の間にできる角度のことで、演劇に例えると台本にあたる。演出(サイン)と舞台(ハウス)と役者(感受点)だけでは劇は始まらない。あと必要なのが、役者同士がどう絡みあってドラマを生みだしていくか、を示す台本(アスペクト)だ。各感受点(特に天体)の関係性を示すという点で、これを回路図のようなものと考えてもいい。それにより、物事は有機的に動き出す。
たとえば、私生活を示す月と、公的な立場を示す太陽との間にアスペクトがあると、この2つは自動的に連動することになる。では、それはどう連動するのか? それを示すのがアスペクトの種類だ。
アスペクトは「イージーアスペクト」と「ハードアスペクト」に大別される。かつて、前者は「吉座相」、後者は「凶座相」とも呼ばれたが、本質的な吉凶はないというのが現代占星術の一般的見解。
《代表的なアスペクト》
コンジャンクション 0度
セクスタイル 60度
スクエア 90度
トライン 120度
オポジション 180度
《その他のアスペクト》
インコンジャンクション 150度
ノーアスペクト
《複合アスペクト》
グランドトライン
グランドクロス
グランドセクスタイル
カイト
小三角
T字スクエア
調停
ミスティック・レクタングル
ヨッド
「イージーアスペクト」とは感受点間の連携が滞りなく楽に行われる一方で、無意識的に働く傾向があり、安易な方向へ流れやすいアスペクトのこと。「ハードアスペクト」とは両者の連携において困難さが生じやすい一方で、必然的にそこへ意識的に取り組むことになり、その困難を克服したときには成果も大きいアスペクトのこと。
厳然とした階級制度があり、身分を越えた行動の難しかった時代であれば、ハードアスペクトの困難さを克服することはほぼ不可能だが、現代であれば努力次第でそれも可能だ。そこで現代占星術では、安易にイージーアスペクト=吉、ハードアスペクト=凶とは考えない。
一方、古典的な占星術においても、別の理由から、イージーアスペクト=吉、ハードアスペクト=凶とは考えないケースがある。古典的な占星術では感受点が居心地のいい場所にいるかどうかを数値化したエッセンシャル・ディグニティ(品位)を重視するが、このディグニティ同士が低い感受点同士がイージーアスペクトをとる場合、良くない出来事が起きやすいと考えるのだ。
よく考えればこれは当然のこと。機嫌の悪い不良少年同士が道でばったり出くわし、「無意識的」で「安易な方向」に流れるとすれば、何が起きるかは火を見るより明らかである。むしろ、この場合、両者の連携に困難の生じやすいハードアスペクトのほうが、ケンカになりにくいといえる。
現代においては、社会環境の変化からエッセンシャル・ディグニティを重視しない占星術鑑定も可能だ。しかし、その人が置かれている環境や状況次第では、やはりこのエッセンシャル・ディグニティは無視できないため、今後、占星術研究に携わる諸氏の知恵を持ち寄り、古典的技法と現代的技法の擦り合わせが必要となってくるだろう。
次回は、各アスペクトの象意について解説する。
占星術における「ハウス」とは何か
ハウスとは地上からの観測において、東の地平線と黄道が交わるところ(アセンダント=ASC)を起点にして黄道を12分割したものであり、コペルニクス以前の天動説的な考え方に基づくシステムである。簡単にいえば「方位」と考えてもいい。
ハウスの概念
ハウス区分のシステムは100種類近く存在している。それらには大きく分けて、空間的な座標計算で黄道を分割する方式と、時間経過を黄道に反映させて分割する方式があり、前者を空間分割法、後者を時間分割法とそれぞれ総称する。
そのうち、心理面を重視する現代占星術では、時間の概念を持つ時間分割法が一般的に用いられており(プラシーダスなど)、現実に現象化するか否かを重視する古典占星術、特に「質問を占う者が理解した瞬間」のホロスコープで占うホラリー占星術では空間分割法(レギオモンタナスなど)を用いることになる。
心理が「時間」と関係し、現象が「空間」と関係するということについて哲学的考察を深めると面白いのだが、ここでは深く触れない。
ハウスには、サインとは異なり、より地上的で具体性のある物事、すなわち実際の行動領域や出来事のジャンルがハウスには示される。たとえば、家庭環境、仕事と収入、恋愛と結婚、友人関係などの状況が具体的に浮き出してくることになる。
まず、12ハウスは4つの領域(クオドラント)に大別される。すなわち、北の4分円(第1~3ハウス)、西の4分円(第4~6ハウス)、南の4分円(第7~9ハウス)、東の4分円(第10~12ハウス)という4つの領域だ。
そのうち、地平線の下に隠れている「北」と「西」の4分円は個人性を、地平線から上の「南」と「東」の4分円は社会性を示している。一方、子午線(縦軸)の右側にある「西」と「南」の4分円は受動的な性質を、「北」と「東」の4分円は自発的な性質を示している。
さらに、4分円の内部には、各分円の性質が強く表れるアンギュラーハウス→その性質を深化・定着させるサクシーデントハウス→各分円のテーマの最終調整と次の分円への準備を整えるケーデントハウス、という3段階のプロセスがある。これもまたハウスの性質をとらえる上での重要ポイントとなる。
ここまでのところをまとめると次のようになる(ハウスの意味はおおよそ)。
【北の4分円(個人性・自発的)】
1ハウス:アンギュラー:自分自身
2ハウス:サクシーデント:お金、資産
3ハウス:ケーデント:基礎学習、スキル、コミュ力
【西の4分円(個人性・受動的)】
4ハウス:アンギュラー:家族、家庭、父
5ハウス:サクシーデント:子ども、恋愛、娯楽
6ハウス:ケーデント:仕事、病気、健康
【南の4分円(社会性・受動的)】
7ハウス:アンギュラー:配偶者、パートナー
8ハウス:サクシーデント:死、セックス、秘密
9ハウス:ケーデント:高等教育、思想、理念
【東の4分円(社会性・自発的)】
10ハウス:アンギュラー:社会的地位、仕事
11ハウス:サクシーデント:友人、将来計画
12ハウス:ケーデント:深層心理、夢
なお、180度関係で対向する2つのハウスは共通のテーマを別角度から扱っているので、その点を考察することでも理解が深まっていく。たとえば、3ハウスと9ハウスはともに学習を意味するが、3ハウスが基本的な読み書きを意味するのに対し、9ハウスは大学レベルの学問や外国語学習を意味する。
また、サクシーデントがアンギュラーのリソース(資源)を表すという点も興味深い。つまり、お金(2ハウス)は個人(1ハウス)のリソースであり、子ども(5ハウス)は家族(4ハウス)のリソースであり、配偶者の収入(8ハウス)は配偶者(7ハウス)のリソースであり、給料(11ハウス)は会社(10ハウス)のリソースに連動する。
占星術においてハウスがこのように決まった経緯には複雑なものがあり、簡単に説明できない。いけだ笑み氏の『ホラリー占星術』(説話社)での考察が簡潔にまとまっていて読みやすいので、関心のある方は一読をおすすめする。
以下、私の関連ツイートを掲載する。
(占星術の)ハウス、空間構造、意識は連動する。
1ハウスから正面を見ると7ハウスであり、これは対峙する他者のこと。
そのとき、自分の姿は見えず、他者の姿だけが見える。
その様子を真横(4ハウス)から見ると、2人の人間が向かい合っている。
これが「私たち」という社会意識の目覚め。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 4月 5
本日のサビアン日記はここで終わり。
さて、リソースということでいうと、ハウス的には2ハウスだが、これはRPGでキャラを作るときの職業選択に似ていると思った。2ハウスが剣士(火)なのか、格闘家(地)なのか、魔法使い(風)なのか、僧侶(水)なのか?
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 4月 22
(僧侶は占星術的には射手座だろうという突っ込みはナシで。あくまでもRPG上での職業特性)
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 4月 22
どの職業を選ぶかで、その後のスキル取得(3ハウス)のやりやすさが変わってくる。魔法使いを選んでおいて、剣で押し切るというマニアックなキャラ育成は例外として、基本的には2ハウスが魔法使いなら、魔法スキル取得に重点を置く。その場合、スキル取得のやり方を3ハウスのサインで考える。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 4月 22
8という数は、隠れた場所、集約、凝縮などを意味し、それはそのまま8ハウスの性質にも投影されている。8ハウスには7ハウスのリソースという意味もある。7ハウスを他者全般と考えるなら、8ハウスは共同所有の意味もでてくる。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 4月 27
占星術における「天体」とは何か
ホロスコープに記された10個の主要天体(太陽・月・惑星)は10種類の「意識の焦点」を表すと考える。空間を区切る座標としてのサインやハウス、あるいは天体間の角度としてのアスペクトは、いずれも空間上の位置関係を示す概念としての存在だが、天体は現実に物質として存在している。つまり、人の意識を引きつけて焦点化する存在なのだ。
たとえば、恋する気持ちで胸が満たされているときには不思議とお腹はすかない。それは、恋愛に意識の焦点が合っていて、日常的な体のケアへ意識が向かわないためだ。これは、恋愛と関係する金星に意識が引きつけられている状態。
しかし、通常は24時間ずっと恋する気持ちではいられず、体からの欲求により意識が空腹感へ引き付けられる。これは体と関係する月に意識が引きつけられている状態。また、会社では仕事に対して意識の焦点が向かうだろう。太陽や火星の出番である。
寝るときには意識の焦点は拡散していくが、夢を見るときには、再びゆるく焦点化する。夢を見ているとき、人は無意識の世界を覗きこんでいるのだが、そのような意識の焦点の状態は海王星が表している。一方、水星は知覚力を表しており、海王星と水星が重なるといわゆる霊能力のような能力を発揮するかもしれない。(その霊能力が当たるかどうかはともかくとして)
こんな具合に、わたしたちの意識はその焦点を次々と移動させており、占星術ではその向かう先が10種類あると考える。それを、「恋するわたし」「1人のときのわたし」「仕事のときのわたし」「夢見ているときのわたし」……といった具合に10人の「わたし」がいると表現してもいいだろう。人生がドラマだとすれば、天体は役者だ。
ドラマの役柄に善人と悪人が欠かせないように、天体にも吉星(ベネフィック)と凶星(マレフィック)がある。ただし、現代の占星術では天体の象意の多重性を重視して、単純に吉凶を判断することはない。また、古典占星術でも各ハウスの支配星として天体を考えるときには、それが吉星か凶星かは考慮せず、天体が居心地のいいサインにいるかどうかを重視する。
参考までに吉凶の分類はこうなる。
吉星:月、金星、太陽、木星
中立:水星
太陽系の天体
人生ドラマの焦点となる「10人の役者=わたし」がいて、それぞれの役柄をサインが示す演出方針に沿って演じている。また、いくつかの役柄については、家族など身近な人物や、特定の物事、状況に演じさせていることもある。たとえば、女性にとって、彼氏は火星で夫は太陽であったりする。男性にとって、彼女は金星で妻は月であったりする。また、父が太陽で母が月、という対応関係もある。
占星術が個人の内面ばかりでなく、人間関係や人生で遭遇する出来事をも占えるのはそのため。人生ドラマのすべてを能動的に作り出すのが天体の働きである。
周回運動をしている天体は、その速度に応じて対応する意識や物事が異なっている。公転周期の短い天体は、毎日変化するようなタイムスパンの短い物事やそこにかかわる意識に影響し、その逆に公転周期の長い天体は数百年かけて変化するような物事やそこにかかわる意識に影響を与える。
たとえば、月の公転周期は生体のサイクルと同期していることから、体や感受性と深く関係してくる。日常生活や日々移ろう気分や感情などがそれだ。そのようなサイクルが短い物事は比較的短期間で何度も体験することになるため、成長段階の早い時期に、その天体の位置するサインやハウスに関連する性質が身に付いたり、関連する出来事が起きたりする。占星術で、月が0歳から7歳までの年齢域に対応しているのはそのため。
一方、人の一生の間に軌道を1周すらしないのが冥王星。公転周期が約248年であることから、それは個人を超えたサイクルで動く物事や意識領域と関係する。個人の意識がそこに焦点化するのは難しく、その存在に気づくことすらできない。深層意識と呼ばれる領域がそれにあたるが、まれにこの意識を使いこなしている人がいる。そういう人は個人の領域を超えて100年後、1000年後の未来を考えている。「国家百年の計」というやつだ。
こういう人物は深層意識を使いこなして大衆へアピールする強烈なカリスマ性を発揮し、大きな物事をなしとげるだろう。これはあくまで占星術的な説明だが、それを抜きにしても決して間違ってないと思う。
参考までに、天体についてのツイートをいくつか貼っておこう。
初期ウィルバーの考え方でいうと、プレローマ段階は牡羊座、ウロボロス段階は牡牛座、テュポーン段階は双子座、ケンタウロス段階は蟹座~山羊座、それ以上のトランスパーソナルな段階が水瓶座と魚座に該当するように思える。配分のバランスがいまいちだけど。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 1月 8
さらに、天体では、水星と金星がウロボロス段階、地球(占星術は地動説なので太陽に反映される)と火星はテュポーン段階、木星と土星がケンタウロス段階、天王星が下位微細段階、海王星が上位微細段階、冥王星が元因段階にあたるのでは。プレローマは惑星が生じる以前の状態。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 1月 8
占星術における太陽は金(ゴールド)の象徴。そして、恒星になりこそねた木星は金(マネー)の象徴。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 4
しかし、占星術的には、太陽から離れた天体ほど公転周期が長くなり、より遠大な視点の物事に関係してくる。つまり、視野が広くなるということで、これを物質性から離れていくことと考えていいだろう。つまり、高次化していくということ。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 5
これは物質的に希薄なほど精神性が強くなるという考え方に合致する。ちなみに、占星術における太陽というのは、地球から見た太陽のことなので、太陽を中心に見たときには地球のことを指す。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 5
太陽と地球と月は存在レベルが異なる。存在するコスモスが違うといってもいい。(もちろん視点を変えれば同じコスモスとして語ることができる。モデルの範囲をどう設定するかという問題なので)
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 6
つまり、太陽が恒星のレベル、地球は惑星のレベル、月は衛星のレベル。
そうなると、月と太陽の位置関係による満ち欠けというのは、三つのレベルが交錯した結果ということになり、占星術においてはこれが基本の構造となって、さまざまな事象が生起してくると考えてもよさそうだ。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 6
これは、マカバ立体が回転して世界を創造するという話にもつながってくると思う。もしくは、見る者・見られる者・見るということ、の三位一体の話とか。
— 神谷充彦 (@mitsuhikokamiya) 2015, 2月 6
意外と天体のツイートが少ないし、あっても変化球的なものしかないということに気付いた。
占星術における「サイン」とは何か
占星術における重要な座標系に黄道12星座がある。「牡羊座」「牡牛座」というあれだ。正確には星座ではなくサインといい、春分点を起点にして、きっかり30度ずつに区分けされている。また、歳差運動により実際の星座とも位置がズレている。そこで、正しくは「牡羊サイン」「牡牛サイン」というのが正解なのだが、ここでは便宜的になじみの「○○座」という表記法をとる。
さて、太陽は1年をかけて黄道12サインを1周するため、サインは季節の変化と関連づけられている。そして、季節は空気感や雰囲気と関係することから、ハウスや天体に色づけを与えるものとしてサインは理解されてきた。ホロスコープを演劇に例えた場合に、サインが「演出」にあたるのはそのためだ。(古典占星術ではサインの扱いが若干異なるが、ここでは触れない)
そのサインは大きく3つのグループに分けられる。
季節の始まりで天候変化の激しい時期(牡羊座、蟹座、天秤座、山羊座)は活動(カーディナル)サイン、その季節の性質が安定する時期(牡牛座、獅子座、蠍座、水瓶座)は固定(フィックスド)サイン、季節の終わりでゆっくりと次の季節の雰囲気が始まってくる時期(双子座、乙女座、射手座、魚座)は柔軟(ミュータブル)サインとそれぞれ呼ばれる。
各サインは1つ前のサインへのアンチテーゼであると同時に新たな進展だ。そこで、活動サインが起こした流れを固定サインが安定させ、柔軟サインが前の2つのサインを調停して両者を生かす道を模索すると考えればよい。ここでいう「活動」「固定」「柔軟」のことを質(クオリティ)と呼ぶ。
◆質(クオリティ)の象意
活動・・・物事を始める積極性、勢い、活発、攻撃性
固定・・・持久力、維持、安定、停滞、頑固
柔軟・・・調整、調停、変化、温和、優柔不断
また、各サインは4元素(火、地、風、水)としても分類されている。この4元素と3つの質が組み合わさって12パターンの性質を形成すると考えると、12サインの象意を覚えることはさほど難しくない。
◆元素(エレメント)の象意
火・・・【上昇する力】意思、向上心、高揚
地・・・【固める力】肉体、五感、所有
風・・・【広げる力】思考、知識、客観性
水・・・【融合する力】感情、愛情、受容
12サインは、奇数番目の奇数サイン(男性サイン)と偶数番目の偶数サイン(女性サイン)としても区分できる。基本的には、前者は他者や環境への働きかけへ向かうサインで、後者は自己の内面を満たすことに向かうサインだといえる。
また、前半の6つのサイン(牡羊座~乙女座)は個人の育成に、後半の6つのサイン(天秤座~魚座)は社会性の育成にかかわり、12サイン全体で自我の成長プロセスを表している。
支配星(ルーラー)についても触れておこう。
各サインにはそれぞれ対応する支配星(惑星、太陽、月)があり、ホロスコープの解読にあたってこれが重要な鍵となる。
◆サイン別支配星
牡羊座…火星
牡牛座…金星
双子座…水星
蟹座…月
獅子座…太陽
乙女座…水星
天秤座…金星
射手座…木星
ホロスコープは何を示しているか
天体の運行が地上の人々や出来事に及ぼす影響を読み解く方法が、古代バビロニアの時代から今に伝わる占星術だとすれば、そのホロスコープには何が記されていて、そこから何を読み解けるのか?
まず、「ホロスコープは空間を記録したもの」だと考えてほしい。その絶対座標は12サイン、いわゆる黄道12星座。西洋占星術でいうサインと星座は少し違うのだが、ここでは深入りしない。ここでは「あなたは○○座生まれ」というときの「○○座」とサインを同じものと考える。各サインは30度、全12サインで360度となる。
一方、地上からの方向を示すのがハウスだ。ハウスは黄道を分割するものであり、太陽でいうと、日の出間もない方向が12ハウス、そこから少し上がって11ハウス、正午前が10ハウス、正午を過ぎると9ハウス……というように、日の出直前の方向の1ハウスまで続く。
マハトマ・ガンディーのホロスコープ
ホロスコープは地上から見た天体(主要な惑星と太陽、月)を天動説的にとらえ、それを黄道360度にプロットしたものだ。そこでは、不動の太陽も移動する。見かけ上の移動である。
その見かけ上の移動では、太陽は1年かけて黄道を一周し、1日でハウスを一周する。黄道上の移動は地球の公転に、ハウス上の移動は自転によるものだ。
出生時のホロスコープであるネイタルチャート(ラディックスとも)は、その人が生まれた瞬間の大宇宙の空間的な記録であり、同時に小宇宙としてのその人に刻み込まれた記録。それは、パラケルススのいう「人間の体内の星」である。
天と地の照応
次に、「ホロスコープは時間を記録したもの」と考えてみよう。特定の年月日、時間、場所において、地上の観察者から見た天体の位置を記したものであれば、これを「天空にかけられた巨大な時計」と考えてもいい。その場合、時計の「時計盤」はサインとハウス、「時計の針」は占星術で用いられる各種の天体となる。
結論:ホロスコープは空間と時間を記録したものである。
そこで、出生時のチャートは、その人が空間と時間から成るこの世界をどのように捉え、そこでどのように生きていくかという根元的なプログラムを示していると考える。そのプログラムから個々人の人生ドラマが生じてくる。
また、これらのことから、占星術はほかの占術と比較して、空間と時間を読み解くことに強いといえる。つまり、「いつ」「どこ」で何が起きるかということを限定するのが比較的得意なのだ。