Astrology_Arcturus

西洋占星術と精神世界の冒険

惑星が描きだす幾何学的な美

 

「数学的に調和のとれた美」は、占星術天文学との間に唯一残された接点だ。

 

たとえば、金星と地球との関係。

 

地球の公転周期約365日と、金星と地球の会合周期約584日との比は5:8である。これはすなわち、金星が太陽を13回公転し、地球が太陽を8回公転する間に、金星と地球は5回会合する(太陽-金星-地球という位置関係で直列する)ということだが、この8年間の会合ポイントを結んでいくと、惑星の公転面上に西洋魔術などでおなじみの五芒星が浮かび上がる。

 

五芒星は「美の比率」とされる黄金比が巧みに織り込まれた図形。占星術において金星が美を象徴することを思うと、これは非常に興味深い符号だ。また、黄金比フィボナッチ数列を介して生命現象とも深く関係する。

 

関連のツイートを以下に貼付する。

 

 

また、水星と地球にかんする同様の作図でも興味深い結果となる。地球が1回公転する間に水星とは約3回会合し(太陽-水星-地球という位置関係で直列する)、水星はその間に6回自転しているのだが、その会合ポイントを起点として水星の1自転ごとの位置をプロットし、そのうち地球と会合するポイント同士を結び、また地球と会合しないポイント同士も結ぶと、そこには、おなじみの六芒星が浮かび上がる。

 

六芒星は西洋魔術では召還に使われる図形であり、天使や悪魔や精霊を呼び出す力を持つとされる。占星術において、水星に「情報を呼び出す」という象意があることを考えると、これもまた大変興味深い符号だ。

 

しかし、このような符号は、占星術天体観測結果の数学的解析によって発展してきたことを考えれば当然のこと。

 

占星術において幾何学的な要素を洗練させたのはケプラーだが、彼はプラトン立体の組み合わせが惑星軌道とほぼ一致することを発見したことでも有名だ。

 

プラトン立体とは5種類の正多面体のことで、幾何学的には「表面を囲む面がすべて同じ形の正多角形である」「各頂点への辺と面のつながり方が全く同じである3次元図形」という条件を満たす立体である。また、その各々は神秘哲学においてこの世界を構成するとされる5元素(火・空気・水・土・エーテル)に対応するとされる。

 

・正4面体(火)正3角形が4枚

・正8面体(空気)正3角形が8枚

・正20面体(水)正3角形が20枚

・正6面体(土)正4角形が6枚

・正12面体(エーテル)正5角形が12枚

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プラトン立体

 

こういった元素論は現代物理学の立場からはすっかり迷信扱いされてしまっているが、わたしは占星術や神秘哲学を研究する立場から、これはある種の「精神のカタチ」であると同時に、現象世界の背後にある不可視の領域で物事を連関させている「場のカタチ」でもあると考える。

 

ケプラーはこのプラトン立体に我々の太陽系の姿を見いだした。

 

彼が創案した「多面体太陽系モデル」では、水星の軌道を円周とする仮想球体をぴったりと納めるように正8面体を配置すると、その正8面体を包むようにぴったり納める仮想球体がそのまま金星の軌道と一致する……と説明される。さらに、こう続く。

 

・金星の軌道を円周とする仮想球体をぴったりと納めるように正20面体を配置すると、その正20面体をぴったり納める仮想球体がそのまま地球の軌道と一致する。

 

・地球の軌道を円周とする仮想球体をぴったりと納めるように正12面体を配置すると、その正12面体をぴったり納める球体がそのまま火星の軌道と一致する。

 

・火星の軌道を円周とする仮想球体をぴったりと納めるように正4面体を配置すると、その正4面体をぴったり納める仮想球体がそのまま木星の軌道と一致する。

 

木星の軌道を円周とする仮想球体をぴったりと納めるように正6面体を配置すると、その正6面体をぴったり納める仮想球体がそのまま土星の軌道と一致する。

 

つまり、水星と金星の間には正8面体(空気)がぴったり挿入され、以降、金星と地球の間には正20面体(水)が、地球と火星の間には正12面体(エーテル)が、火星と木星の間には正4面体(火)が、木星土星の間には正6面体(土)がそれぞれ挿入された空間構造となっているのだ。

 

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ケプラーの「多面体太陽系モデル」

 

この幾何学的な美しさは、何なのか。

 

ケプラーが数学的な美とその神秘を追求したピタゴラスを信奉していたのもうなずける。太陽系はこのような美しい法則性によって成り立っている。

 

ここでは詳細を割愛するが、このプラトン立体の組み合わせに見る各元素の配置と各惑星の象意との関係についても、大変意義深い一致が見られるということは一言述べておきたい。

 

さて、太陽系というマクロな構造にそのような美があるのなら、ミクロの世界にもあるはず、と考えた男がいる。

 

シカゴ大学に16歳で入学し、第2次世界大戦中に原子爆弾の開発にかかわって世界初の原子炉を作り上げた天才科学者ロバート・ムーン(1911~1989年)がその人。彼は元素の周期律がケプラーの多面体太陽系モデルと似た構造(ただし立体の順番は異なる)で説明できることを発見し、ミクロの世界にもプラトン立体による幾何学的な美が展開されていることを証明した。

 

天文学占星術と物理学、この三者が一つの原理を共有するというのは何とも不思議な光景だ。しかし、そこにはマクロとミクロの物質と精神とを貫く「カタチ」が確実に存在している。