Astrology_Arcturus

西洋占星術と精神世界の冒険

土星以遠天体(トランスサタニアン)の象意と発見時の社会情勢

 

冥王星コンスピラシー 第2巻」より一部抜粋。

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 ここで、土星外惑星の神話とその占星術上の象意などについて簡単にまとめておこう。

 

天王星-ウラヌス】

 《神話》

 天王星の名はギリシャ神話の天空神ウーラノスに由来する。ウーラノスは大地の女神ガイアの息子であると同時に夫でもあり、ガイアとの間に巨躯を誇るティーターン12神をもうけた。しかし、ウーラノスは自らの子のうち、キュクロープスやヘカトンケイルについては、その醜さを嫌いタルタロス(奈落)へ幽閉。それに怒ったガイアはティーターン12神の末弟であるクロノスに命じてウーラノスの男根を切り落とさせた。

 

天王星発見時の世相》

 王制から資本主義・民主主義へ。ドイツのロスチャイルド家が各国に戦費を貸し付けるビジネスで成功を収めて莫大な富を得たことで、国際金融資本が世界情勢を左右する構造が作られた。その一方で自由と平等を求めてアメリカ独立戦争フランス革命が勃発。天王星発見の年、ヨークタウンの戦いにてアメリカの勝利が確定する。

 

《象意》

 天王星土星が象徴する「ローカルな社会の枠組み」に改革の風穴をあける存在。それは、既存の枠組みを壊しつつ、グローバルな視野を確立する働きをなす。自由、改革、博愛、平等、先進性、国際性、テクノロジーといった象意を持つが、既存の社会秩序を維持しようとする側からはエキセントリックな反逆性と映ることになる。現代において天王星はITやインターネットという象意を持つこともある。

 

 なお、神話においてウーラノスの男根を土星と対応するクロノスが切り落としたことは、天王星の象徴する改革精神をローカルな社会の枠組みが去勢してきた歴史と照らし合わせると大変興味深いところだ。その意味で、1781年の天王星の発見(正確には再発見といった方がよい)を「天王星の復権」と考えてもいいだろう。

 

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アメリカ独立戦争

 

 

海王星-ネプチューン

《神話》

 海王星の名はローマ神話における海神ネプトゥヌスに由来する。この神はギリシャ神話の海神ポセイドンと同一視されており、三叉の矛によって大地を打ち、そこから泉があふれ出したという伝説を持つ。ケルト神話、イラン神話、インド神話にも同様の伝説を持つ神が伝承され、同一起源の神格だと考えられている。

 

海王星発見時の世相》

 帝国主義の興隆と産業革命の加速化により資源としての石油のニーズが高まる。このころ活躍した石油王ジョン・ロックフェラー(1839~1937年)とその一族は後に世界的な国際金融資本としてのロックフェラー財閥を成すことになった。

 この時代には社会主義運動も盛んとなる。また、爛熟した文化は百花繚乱の様相を見せ、ロマン主義、世紀末思想、神智学や黄金の夜明け団などのオカルティズム、SFなどが流行し、映画とレコードの発明はそれに拍車をかけた。

 さらに、化学、物理、生物学などが著しく発達し、化学合成が工業技術として確立したほか、心理学の分野では無意識の領域を扱うフロイト心理学が現れた。3次元を越えた4次元の世界を数学的に記述するリーマン幾何学もこのころに登場している。

 

《象意》

 海王星は「水」が象徴する無意識の世界に漂うイマジネーションを、顕在意識へと注ぎ込む存在である。それは、人にある種の夢と幻想を与えて熱狂や流行を生み出し、社会の枠組みそのものを溶かし去る働きをするが、既存の社会秩序を維持しようとする側からは退廃的な耽溺性と映るだろう。具体的には、新宗教やオカルティズム、ファンタジーや芸術のほか、石油、化学、薬剤、アルコール、ドラッグなどを象徴する。

 神話における「大地」を土星の象徴する「社会の枠組み」と考えるなら、海王星の象意をより正確につかめるはずだ。ローカルな社会の地層の下に流れている集合的無意識の層を三叉の矛で打ち、地上にそれをあふれさせるのが海王星の働きなのである。

 

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 ◆H.G.ウェルズ宇宙戦争』のイラスト

 

 

冥王星-プルート】

 《神話》

 冥王星の名はローマ神話における冥府神プルートーに由来する。これに対応するギリシャ神話の神ハーデースは冥府をつかさどる神であり、ポセイドンとゼウスの兄にあたる存在。ハーデースは出生直後、「生まれた子に権力を奪われる」という予言に恐れた父・クロノスに飲み込まれてしまうが、ゼウスに助けられてクロノスらと戦い勝利。結果、冥府と地底の支配権を得ることになった。なお、ハーデースには豊穣神としての性格もある。

 

冥王星発見時の世相》

 冥王星発見に前後して2度の世界大戦が勃発し、世界のパワーバランスは大激動を迎える。中でも第二次世界大戦は、冥王星発見と同時に起きた世界恐慌がその直接的なきっかけとなった。大戦後、世界初の核兵器を開発したアメリカが世界の覇者として超大国化し、大量生産・大量消費のライフスタイルを世界中へ発信して、経済のグローバル化の下地を作ったことも特筆すべき点だ。

 冥王星発見後、科学の発展はますます加速し、飛行機、潜水艦、ロケット技術などの発達によって、地球上に人類未踏の地はほとんどなくなった。科学分野において特に重要なのは冥王星発見前後に確立した量子力学である。中でも、ハンガリー出身の物理学者ジョン・フォン・ノイマン(1903~1957年)は重要なキーパーソンだ。

 冥王星発見の年にアメリカへ移住した彼は、原爆を開発するマンハッタン計画の主要メンバーの1人となったほか、コンピューターの作動原理における数学的基礎を築いた。そのため、現在の一般的なコンピューターはすべて「ノイマン型コンピューター」と呼ばれている。

 

《象意》

 冥王星は既存の世界を徹底的に破壊しつくして、そこに新生をもたらす存在である。神話におけるプルートーが冥府神であると同時に豊穣神であることに注目してほしい。また、プルートーがクロノスを倒したという点も重要だ。クロノス(土星)はローカルな社会の枠組みを象徴しているのだから、冥王星は既存の社会を徹底的に破壊しうる存在だといえよう。

 そのことから、占星術における冥王星は、激動、大異変、大変動、死と再生、破壊と新生、極限、核兵器といった象意を持つことになった。

 

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◆長崎原爆

 

 どうだろうか。まさに土星外惑星発見後の世界は、激動につぐ激動の展開だったとはいえないだろうか。

天王星の発見が王制から資本主義へのシフトを起こし、海王星の発見が既存の宗教や倫理観を衰えさせ、冥王星の発見は核とコンピューターの技術によってアメリカ主導のグローバル化の端緒を開いたのだ。

 中でも冥王星の存在感はあまりに大きい。核兵器が地球から生命を一掃しうる究極兵器であることを考えると、まさに近代の世界は冥王星に支配されていたといってよい。

 

 繰り返しになるが、土星外惑星がもたらすこういった異変を単純に「凶意」ととらえてはならない。特に、最外殻に位置する冥王星は「外部からの新しい力を取り込む弁」として、人類に新陳代謝をもたらすのである。その「新しい力」は、既存の権威や秩序や価値に固執する人にとっては脅威を感じさせる「異物」だが、柔軟な心を持つ人にとってはむしろワクワクするような変化の原動力となる。

 土星が最外郭惑星であった時代を「土星支配の時代」とするなら、冥王星が発見された1930年以降は「冥王星支配の時代」と呼ぶことができよう。