Astrology_Arcturus

西洋占星術と精神世界の冒険

占星術はなぜ「当たる」のか?

 

どうして占星術は占いとして有効に機能するのか? それを説明する言葉に、「下なるものは上なるものの如し、上なるものは下なるものの如し」(As above so below So below as above)というものがある。「天地照応」ともいう。

 

占星術を用いて多くの人々を救ったといわれる16世紀の医師パラケルススは「人間の体内の星は、天が始め誕生させたことを模倣する。その結果、天のできごとが必然的に人間の体内にも及ぶのだ」と述べている。天の星々と照応関係にある「星」が人の体内にもあるのなら、人体は一つの宇宙ということになる。古人はこれを、大宇宙(マクロコスモス)に対する小宇宙(ミクロコスモス)と考えた。

 

大宇宙の星の運行は小宇宙であるわたしたちの存在に影響を与える。ゆえに、その影響の法則性が分かれば未来を占うこともできる――というのが占星術の依拠する根本原則だ。

 

そのような影響力の一部は科学的にも確認されているという。占星術土星と鉛との照応関係が説かれていることから、ドイツの化学者リリー・コリスコはそれを証明する実験を行った。1928年のことだ。それは、土星の位置によって、溶液状にした鉛の結晶化に何らかの変化があるかどうかを検証するというもの。結果、土星が食(太陽や月が土星を隠す状態)になっているときは鉛の結晶化に時間がかかるか、あるいは、まったく結晶化しないことが分かった。

 

科学的研究において、かくあるべき手順が踏まれていないことも考えられるが、ともかく、このように天体が地上の物質に与える作用は「コリスコ効果」と呼ばれ、多くの研究者によって類似の実験が行われた。

 

地球から遠く離れた天体が物理的、化学的に影響を与える理由を科学はうまく説明できないが、天地照応という仮説を想定すれば説明可能であり、その作用が占星術を成り立たせているとも考えられる。

 

一方、農業占星術という分野では、月が水のサイン(蟹座・蠍座魚座)にあるときにトマトを植えると、火のサイン(牡羊座・獅子座・射手座)のときよりも収穫が増えるとされ、蟹座と獅子座で比較すると、前者の方が45パーセントの増収になることが実証されたという。

 

これは、どのような統計手法をとったのか不明なので何ともいえないが、かなり厳密な統計による研究も存在する。

 

中でも、20世紀中頃にフランスの心理学者ミシェル・ゴークランが統計学を厳密に用いて行った、5万人の出生資料を元にした研究が有名だ。もともと占星術を否定するために始めた研究だったが、職業の成功・不成功とホロスコープとの関連性を仔細に検討した結果、天体の影響を裏付ける統計的に有意な(意味のある)数字がはじき出され、占星術を肯定せざるを得ない結論に達してしまったのだ。

 

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ミシェル・ゴークラン

 

ただ、残念ながらこれらの研究は「まっとうな科学」としては扱われていない。1975年にはノーベル賞受賞者を含む科学者たちの連署による、占星術批判の声明が発表されるなど、西欧のアカデミズムの世界では占星術に対する風当たりは思いのほか強い。そこまでムキになって否定することもない気がするのだが、かつて、占星術が科学の一部であった遠い記憶から、ある種の近親憎悪が生じているのだろうか。

 

ちなみに、懐疑主義者の団体「サイコップ」では、このゴークラン研究に関係して、ちょっとした騒動が起きている。参考までに引用しておく。

 

サイコップ - Wikipedia

 1980年2月 - 「『スケプティカル・インクワイラー』誌で火星効果(天体の位置が人の運命や能力に影響を与えるという占星術の主張)に対する検証と批判を行った」という(CSICOPのウェブサイトでの記述・主張による)[2]。つまり、CSICOPの最初の検討対象として選ばれたのは、フランスの心理学者・統計学者ミシェル・ゴークランの説であり、「特定の職業に従事する人の生誕時の惑星の位置と職業上のその後の成功には相関関係が認められる」とする説であった[1](第三者によると、その時実際に起きたのは以下のようなことである)。創立メンバーに含まれていた天文学者のジョージ・エイベルと同じくデニス・ローリンズ、および統計学者マーヴィン・ゼレンがこの案件に関する調査チームを結成し、ゴークランの説に関して詳細な検討調査を行った[1]。そこまではよかったのだが、このチームは(彼らの予想に反して)、調査・検討の結果、ゴークランの説とほぼ同様の結論を得た[1]。自分たちを正義の味方の十字軍のように思い、自分たちの行為を聖戦のように思いこんでいたCSICOP創立者たちの予想に反して[1]、いきなり初戦で、相手のほうに分がある、という事態に直面してしまったのである[1]。CSICOP内部では激しい議論が起き紛糾、組織内部で行っていた事実隠蔽に関する相互非難が起き、ニュージーランドのリチャード・カンマン、イギリスの懐疑派の重鎮とも言えるエリック・ディングウォールなどの有力メンバーの脱会が相次いだ(ゴークラン事件)[1]。上記の案件の調査にあたったデニス・ローリンズも脱会することになり、雑誌『Fate(運命)』の1981年10月号において、ゴークラン事件の顛末についてスッパ抜き、次のように述べた[1]。「オカルティズムの弾劾にたずさわる人々の信頼度には疑問を呈さざるを得ない[1]」。同誌編集者によって「CSICOPはいかなるイカサマをも辞さない徒党である。重要な調査ではヘマをやらかし、結果をごまかし、自分たちの失敗は隠ぺいし、真実を明かすと迫る仲間に対しては蹴りを入れる」と評されることになった[1]